Teddy Bear Voice Vol.107

特定非営利活動法人 日本テディベア協会発行
 テディベア・マガジン

赤司氏の方程式

赤司竜彦

Q. 世界中のアーティストやファッションブランド、キャラクターや企業、その他にも様々なコラボレーションをされていますね。
このコたち(ベアブリック)が個性を持っていくというか、成長していくというか、多くの人たちによって育てられているという想いはありますか?

A. 私自身はこのコ(ベアブリック)たちが出来上がった時点で一つ仕事として完結しているようなところもあったんですね。 キャンバスやフォーマットとしてのテディベアというか、ベアブリックが出来上がった後に、いろんな方がいろんなご提案をして下さると。 この15年間の私の作業っていうのは彼らのマネージメントなんですよね。 要は、この仕事はやらせていただく、この仕事はイメージに合わないのでお断りさせていただくという様なマネージメント業をずっと15年間続けてきたような気がします。 いまだにビックリしているのはファッションブランドのシャネルからベアブリックを出してくれっていうオファーがあったときですよね。 これは本当にビックリしました。 また、ベアブリックそのものをフォーマットにして、いろんなアーティストにデザインをしてもらったものを世界中で周遊させていくという、 最初のプログラム(BE@RBRICK WORLD WIDE TOUR)は確か2005年ぐらいにはじめたんですが、その当時は自分たちでやろうと思っていたんです。 そうしたところ、当時60体くらいを世界中空輸して運ぶと、人を60人運ぶよりお金がかかる事がわかったんです! 

Q. そうなんですか?!

A. そうなんです。60人分の旅客機のコストを出せってことか?という話になりましてね。 会場はどこにする?中の内装はどうするんだ?とか困り果てていた時に、スポーツメーカーのナイキさんが「うちが全部サポートする。」とおっしゃってくださって、スポンサーというよりも、ギャラリーからクリエーターまで全部たててワールドワイドツアーそのものをまわしてくれるというのです。 他には、ジーンズメーカーのリーバイスさんから「デニムの生地を使ったベアブリックを作ろうよ、そのときに一般の方からもデニムを履いたベアブリックのカスタムデザインを集めてそれをギャラリーに展示したいんだ。」とか! これが質問の答えになっているかどうかわかりませんが自分の想像がどうこうよりも、育てていただいた感謝しかないです。

Q. これまでベアブリックは32のシリーズがだされていますが、その中でもいちばん印象的だったシリーズや出来事を教えてください。

A. やっぱり最初のシリーズですね。どこかでも話したかもしれないですけど、「3万個は売らないとなぁ」というところからスタートしたんですよ。 今でもはっきり覚えていますが、そのときベアブリックのシリーズ1とキューブリックのセサミストリートが横並びで広告に載っていて、うちの奥さんに「どう考えてもセサミのほうが欲しい」と言われてガックリきましてね。 「僕はこっち(ベアブリック)のほうがいいと思う!」なんて話をしていたんですけど、いざ蓋を開けてみたらシリーズ1が予想以上にご好評いただいて驚きました。 3万個売れなきゃ3万個売れなきゃという話をしていたら、記憶違いでなければ当時ファーストオーダーで30数万個。 シリーズ2でオーダーが100万個超えたという話をされて、「えっ!?」って。 未だに間違っていなかったって思う判断が1つだけあってマーケットが望むがままに数を出していったら間違いなく短命で終わるなって気がしたんです。 マーケットの要請に基づいてどんどんキャラクターのマーチャンダイジングを進めていくつものくまのキャラクターとかそれに類似したキャラクターたちがバタバタと倒れていくのを見てきたので、このコに関してはテディベアと同じように100年育てられていかれるようにするために、ある程度きちんと数のコントロールをして、常に欲しがっていただけるような環境づくりをしていかないとだめだね、と。 問屋さんからはすごく怒られました。 「出し惜しみしているんじゃない」とか、「何様のつもりだ」とか、ずいぶん怒られたんですけど、そのときに私がご説明したのが「どうか信じてください、10年20年とこのコを売り続けていただくことのほうが問屋さんにとってもうちの会社にとっても遥かに大事なことで、ここで100万個売ったら来年このコはいなくなります。」という話をしたんです。 それでご理解いただけて、「わかった、そういうことだったら協力しよう!」という話で問屋様側にもご理解いただけた中で、そこから徐々に徐々にシリーズの数を重ねていったという感じだったんです。 あとは、そのころのシリーズとは関係ないところなんですが、かなり早い時期にカルピスの代理店からベアブリックを使ったキャンペーンをやりたいというお話しをいただいて、これも当時ビックリしたんですよね。 すごい数のオーダーだったんですよ。 代理店さんの持ってくる話ってすごいなぁなんて思いつつ、そのときは、小さなもので作りたいというお話があって、100%のサイズじゃないんだったら宣伝の意味も含めて一度望まれるままにマーケットに出してみようとなり、ベアブリックがデビューした年にそのメーカーとキャンペーンをやらせていただきました。 カルピスさんとはその1回でしたが、そのあとはずっとペプシさんとご一緒させていただいて、そこから映画関係だったり、キャラクターやブランド、アーティストとのコラボレーションやタイアップが増えていきそれが連鎖的に起きていったそんな状況だったと思います。 ご質問に戻ると、やはりシリーズ1!それに付帯したシリーズ2の準備をしている最中の頃が今まで作っていたものとは違うものを作れたかなっていう、一番印象的な感じがしましたね。

Q. 15年間で特に大変だった時期などありますか?

A. どうでしょう。セールスが下降してもこれは商売にならないからもう作らないとか、 例えばこれはちょっとテコ入れしてアニメにしたほうがもっとファンが増えるんじゃないか!みたいなブレ方をせずに済んだところでしょうかね。 あるとき、アメリカのケロッグの社長の自伝を読んだときにすごく感銘を受けまして。 ケロッグのいろんなパッケージキャラクターをテレビでアニメーションにしようという提案を死ぬほどされたそうです。 それはそうですよね、毎日毎日CMが流れていましたし、確かシェアが60%ぐらいのメーカーなので、おもちゃメーカーもフィルムメーカーもアニメを作ることを提案してきたのですけど、その社長は絶対に作らないと。 「なぜ作らないか?それは簡単なことだ!このキャラクターに会えるのはスーパーマーケットの棚であり、あなたたちのキッチンの中に居ればそれでいい。 変なブームにして私たちの大切なキャラクターを終わらせたくない」という、その言葉にとても感銘を受けていたんです。 とにかくいい時期も悪い時期もあるけれど自分たちできちんとこのコたちを育てていっているわけだから、そこであまり一喜一憂せずにきちんとやっていけばいいんじゃないかと考えた時期もありましたね。

Q. ベアブリックが生まれたきっかけがテディベアだという話を拝見しました、テディベアというぬいぐるみが今後どのような方向に進んでいくのか、赤司さんの目線でお聞かせいただけますか?

A. そうですね・・・ 本当におこがましいことを申し上げればベアブリックも自分の中では1つのテディベアですし、例えばテディベアという定義ではないんですが、ディズニーシーで展開されているダッフィーというキャラクターも、あれも現代のテディベアだなと思っていたりします。 そう考えていくと実はテディベアの定義そのものがどこにあるのかちょっとわからないんですけれど、実は微妙に形を変えながらいろんな形で派生して、今こうして脈々といろんなところに波及しているのかなと。 それこそポストペットのモモちゃんもそうでしょうし、今パッと思いつかないだけでくま(テディベア)をベースにしていないキャラクターってなかなか難しいんじゃないのかなぁと。 ワンオフで作家さんがくまちゃんを作っていく行為そのものはなくならないというか、廃れないと思っているんですよね。 そこでの抱き人形としてのテディベア的なものと、キャラクターやアイコン等、いろんな形でテディベア自体は成長したり変化したりしながらこの先もきっと100年200年と続いていくんじゃないかとそんな風に思っています。 頭・両手・両足をリング状のジョイントでコネクトしていく作業というかプロセスがないとそれはテディベアではない的な定義が1つできるのかなと思いつつ、ただ実際にはそうでないものもありますよね。 そう考えたときに大胆なことを言うと、くまのぬいぐるみはすべてテディベアであ ると考えたときに、そこにあまり不自由な制約を設けることなくいろんな方が自由に作られていく中で、またそこからその作家さんの一点物から始まりそれこそ世界中で愛されるようないろんなキャラクターに成長していくようなものもあれば、そこは自由でいいんじゃないのかなぁって気もしますね。

Q. ベアブリックはこうありつづけたいとか、今後チャレンジしたいことってありますか?

A. こうあるべきだとかこうでなくてはならないとか、将来はこうなるぞって、ベアブリックに限らずなんですけれども、あまりそこを自分のなかで体系化しないというか、プランニングしないようにはしているんですよね。 考えていなかった故に、いろんなことが出来ているのかなっていう気もしていたり。 最近ちょっとビックリしたのが、一昨年ぐらいでしたか、アベンジャーズという映画が公開されるときにディズニーの当時の宣伝担当の方から「使っていいかな?」と突然言われまして、なんですか?と訊いたところ、109の垂れ幕でアベンジャーズのキャラクター全部をベアブリックにして垂れ幕を垂らしていい?と言うから、「えっ?逆にそんなことやっていただけるんですか?」と、たぶんそれって自分の想像の中にはないわけですよ。 他に、シュタイフとのコラボも出来たらいいね!なんて言いながら5年前頓挫したものの、いろんなご縁があってこうして作ることができたみたいな。 頂戴しているお話しとかこちらからご提案することに対して、1つ1つできる限り誠実に対応させていただいているつもりで、結果その積み重ね に未来があるのかなって気がしているんですよね。 本当にできる限りたくさんの方といろんな仕事をしながら、一緒にやってよかったって思っていただかなければやる意味もないと思っていますし、ベアブリックにとってもご一緒させていただけて、いろんな方に知っていただくきっかけになっていればと思います。 ご質問の答えになっていますか?笑  この先何にチャレンジするかというと、何の制約もないところでベアブリックがひとつ でも多く出来る可能性を世界中に拡げていきたい、そんなところでしょうか。

Q. それは社会貢献にも通じていくってことですね。

A. はい。そう思います。 実際3・11の時にチャリティーのベアブリック「ONE LOVE」を作り随分ご寄付はさせていただきましたね。 社会貢献がすべてとか、貢献しなくてはいけないというところは自分の中にはないんですけど、結果的にベアブリックが社会的に認知されている土壌の広さを考えたときに、そういったところに対してもきちんと貢献できるような企業としての姿勢は持っていないとだめだよなっていう気持ちはありますね。

Q. シュタイフとのコラボのきっかけは?

A. 当時、知人がシュタイフベアの普及みたいなことをしていまして、シュタイフ社の生産背景が整ったとのことでようやくご一緒できそうですっていうお話しをいただきまして。 もともと5年くらい前にシュタイフ社からアプローチがあり、どうしてもベアブリックとやりたいとのお話しをいただいたんですが、試作の途中で挫折しちゃったんです。 残念だね なんていう話をしていて、その後ようやくシュタイフ日本支社の体制も整ってなんとかできるようになりそうなので、もう一度ゼロから試作を作り直してみようっていってできたのが今回のシュタイフ×ベアブリックだったんです。 出来たときは感慨深かったですね。

シュタイフとベアブリック

<シュタイフ x BE@RBRICK>

Q. 赤司さんはテディベアを作られたことありますか?

A. 記憶にあるのは今から15年くらい前だったかな、かなりマニアックな映画なんですが『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』という映画がありまして、すごく低予算で撮られた映像作品で、男女3人が森の中に紛れ込んでその中で怖い目に合いながら…  みたいなお話なんですけど、これを日本で配給したのが友人で「赤司くんお願い!なんとかして!」って言われてですね、なんとかしてってどうしたらいいのかなって!笑 そして、何故かそのとき何の前触れもなく映画の中には出てこないけど、ブレア・ウィッチのイメージでテディベアを作ろうよって話をしたんです。 あの頃はまだベアブリックはないんですよ。 99年ぐらいだったかなぁ…。 ライセンス元に、劇中には出てこないけどテディベアを作らせてくれっていう話をして、そのときにパターンとデザインと中のワッシャーの大きさを指定して細かい指示を出した記憶がありますね。 ミッシングベアというのですが、これが私が関わった唯一のテディベアですね。 後にも先にもこれだけです。この後、ベアブリックが出てきていますので。 今考えてみると、ミッシングリンク的な作品というか商品だったのかもしれませんね。 どこにも言っていないですし自分も意識していないですけど、もしかしたらベアブリックの前身ってこれだったのかもしれないですね! 

ミッシングベア

<ミッシングベア>

Q. ご活躍の中、とてもお忙しくされていますが、一日の流れをお聞かせいただけますか?

A. 昼から朝まで仕事していますね。だいたい1日18時間ぐらいです。 私自身は経営サイドの人間ですから何時間仕事しようが怒られませんし。 もちろんスタッフは帰しますよ、もちろん。(笑) スタッフは帰すんですけど、みんなが帰ってからじゃないとその日の宿題や、商談させていただいた方とのお仕事を別のスタッフへまわす指示項目のフレーム等が作れないので、だいたいこの仕事を夜中やるパターンですね。 たまにソファーに寝てしまったりとか、「あ、2時間寝ちゃった!」とかそういうパターンです。 皆さんが思っているような華やかさはないですよ。 神様から働きなさい!って言われているんだなと思ってます。(笑)

Q. 前回のテディーベア ラブズ パーソンのゲスト西和彦さんから赤司さんへ質問を1つ戴きました。 「テディベアとメディコム・トイを『掛け合わせたとき』どんな世界が見えそうですか?

A. テディベア×メディコムトイという掛け合わせということであれば、私の思考回路的にはキューブリックxテディベア=ベアブリックというのが誕生の方程式ですので、ベアブリックが掛け合わせた世界になりますね。

Q. テディベアを作っている、またプロとして活動している作家さんにむけて、ひと言戴けると嬉しいです。

A. テディベアを作り始めたきっかけや、自分なりのゴールって人それぞれだと思う んですよね。 どんな形であっても間違いはないですし、ものづくりに携わっていらっしゃる人たちに私が言えることが1つだけあるとしたら、ただ1つ! もしも作りかけであきらめてしまったものがあるなら、絶対に完成させる。造りあげる。 途中でやめないこと。それだけです。 出来上がることによって見えてくるものが絶対ありますから、もういいやとか、なんか気に入らないんだと、そこで投げ出さないでください!ってことですね。

赤司竜彦さんとイノウエカンナ

<代々木上原にあるメディコム・トイ本社にて>

イノウエカンナ作 タイトル みつめる 910x727mm 2016年

<みつめる 910 x 727 mm 2016年>